8月2日の日記
専門誌の執筆でお世話になっている編集部から
宅配便が届いた。
中身は自分が携わっている雑誌と、それに関連する
その他の専門誌、それから編集部に毎月送られてくる
自分宛ての手紙。

これは数学の方ではなくて、もう一つの仕事の方のお話。
私宛ての手紙は、月に数通から多い時で数十通ある。
殆どが素人専門家からのもの・・平たく言えば亜流。
その自信と根拠が一体どこからやってくるのかは知らない
けれど、質の悪い一家言を恐ろしく無駄な比喩表現などを
用いて高飛車に綴ってくる手紙。

大方の内容は、私が書いた物に対する批評、はたまた質問等の
一方的な物がほとんどで、稀には相談めいたものまである。
偉大な思想家や哲学者、作家の名をやたらと引っ張り出して、
ご丁寧にそこに注釈まで加えながら、それら歴史的人物の理論を
テキスト通りに、或いは批判的に(無論、無自覚に)説明してくれるのだ。

殆ど例外なく己を‘普通の人間とは違う才能’の持ち主だと
信じて疑わない不思議は‘凡その人間には理解され難い程の
才能’によるものだという、まるで根拠のない自負心により
培われている。

それはあたかも自らが専門家であるかの様な物言いばかりで、
まるで謙虚という言葉自体を知らぬ様。
それがどんな場合でも一定の敬意を示すというのは己の器量。
私はこういった手合いを相手にしないと何時からか決めている。
いちいち読んでいては限がないし、そもそも意味がないもの、
という認識。

対応すること自体にきりがないのではなく、憚らずに言って
しまえば、手紙の送り主の大半が独りよがりな輩であるから。
そこに僅かな才能、或いはその芽を感じさえすれば、この限り
ではないけれど。
この分野の恐ろしいところは、数学と違って言葉さえ分れば
幾らでもどこからでも入り込めるし、その気になれば一見一端の
発言ができる、故にタチが悪い。
その解釈に於いては、どんなに説明してみてもないものには
触れようがない上に、殆どが無自覚だから尚更厄介。
そして残念ながら、非礼をチャラにできるような才能には未だ
嘗てお目にかかったことがない。

私は例えいかなる分野が対象であっても、更にそれがいかなる
次元で述べられたものであっても、凡そ素人(評論家)というものを
好まない(実際、ちょっとでも利口なら評論は腹の中だけにして、
感想程度に止めておくというもの)。
彼等はまず同じ土俵に立たなければ己の言葉が意味を成さず、
また真実みさえも帯びず、無形ではあるものの、ある種の権利
すら持ち得ないという事を知らない、と常々強く感じるもので
あるから。

つまり、それすら悟らないという事自体、そもそもがその程度
であるという結論。
権利を得なければ言葉すら発する事ができがない、と言ってい
るのではなくて、わきまえる事を知らぬ者は、まだ何も知らぬ
者に等しい、という意味に於いて取るに足らない存在。

外野からものを言う程簡単な事はない。
例え、その中に幾許か真理が含まれていようとも(驚くべき
ことに、真理いうものは、どんなに愚かな思考の中にさえ、
あらゆる次元で幾許かそこに潜んでいるものだから)。
如何なる分野に於いても、その海の中に入って初めて、その
深淵さや冷たさを実感するものであると思う。
例えば、患者が如何に己の病気に詳しなったつもりであろうと、
患者はただの患者である。

対等なつもりの勘違い、仮にその知識が本物ならば、その滑稽
さに気付いて、自らわきまえるであろう。
自ずとわきまえる・・これはもう研究者としてもただ人としても、
力量や才能を計る共通の物差しでもあるとも考える。
人は知れば知るほどわきまえるものであるから。

テレビで生ビール片手にナイターを観ながらヤジを入れる
のとはわけが違う。
プロ野球選手相手にバッティングフォームを指摘する草野球
チームの素人の如く無礼。
百歩譲って、縦んばその指摘が的を得ていたとしても(そう
いった事は可能性として往々にして有り得ることだけれど)、
つまりはそこら辺の振る舞い方が肝心なのだという話。

めんどくさー・・・支離滅裂だけれど、まぁいっか。

それに実際の話、私にはある思惑があって、これらの執筆には
敢えて幾許も魂を込める事をせずに、今の所、唯ひとえに生活
の為の執筆と割り切っている。
故に、そういう類の手紙が送られてきて気まぐれに開封する事は
あっても、最近ではきちんと読む事すら稀である・・。

コメント

See
See
2007年12月8日2:09

深夜に失礼。こんばんは。
足跡を見て訪れました。

あなたに共感を覚えます。
それと、私の個人的な意見なのだけど、あなたの文章はしなやかで靭性に富み美しいです。

また来ますね。

BOKU
BOKU
2008年4月8日9:38

数学者さんなんですねぇ
古い日記にコメントつけてすみません。

私の職種は、ことに素人との垣根が低く、また、たちの悪いことに、それでもなんとか仕事になってしまうことがあるので、同じように色々と資料が送られてきますが。。。

私の場合ですと、正直、開けてもいないCDが山積みな感じで。

たまにしか更新しない私の日記に、珍しく足跡がついていたものですから、なんとなくの書き込み、失礼しました。

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